TOSPAでは日本国旗を3種の素材で生産しております。綿生地、アクリル生地、ポリエステル(テトロン)生地です。販売を比率でいいますと綿:アクリル:ポリエステル=5:5:90です。圧倒的にポリエステル(テトロン)素材の国旗が多いです。綿素材、アクリル素材の国旗をご指定されるお客様もいらっしゃいますので生産を続けています。

■アクリル繊維の国旗の生産は減少傾向
「セーターや肌着などに使われるアクリル繊維の国内生産量が10年で半減した。ほかの合成繊維と比べリサイクル技術が進んでいないため、環境負荷を減らす取り組みを進める衣料業界で使用が減っている。気候変動によって寒さの厳しい期間が短くなり、アクリルが多く使われる冬物の需要が低調という要因もある。」らしいです。2025/2/7の日経新聞によりますとアクリル素材の生産は減少が続いているようです。
実は国旗もアクリル素材の国旗は需要も生産も激減しています。要因はアクリルバンティングという国旗用の織物の生産会社が数社しかないこと。アクリル繊維メーカー自体も日本に2社しかない。コロナを機にアクリル繊維で旗を染色する工場も撤退や廃業が続いています。そんな事情でアクリル素材の国旗は価格も上昇して、結果的に悪循環で需要も減っています。
■アクリル素材の国旗の歴史
歴史を紐解くと、アクリル素材の国旗が日本で発達したのはある事情があります。それは1964年の東京オリンピックで使用する世界の国旗(入場行進やスタジアム掲揚やメダル表彰式等)にアクリル素材が採用されたことが契機になりました。様々なメーカーの素材をテストした結果、当時の新化学繊維製品のアクリル素材が採用されたそうです。アクリル生地は羊毛(ウール)のような風合いがあって高級感もありました。
アクリル素材で国旗を作るのは日本独特で、海外ではアクリル素材の国旗はほとんどないようです。その後の日本で開催される主要なビッグイベントである1972年札幌オリンピック、1998年長野オリンピック、1970年大阪万博、2002年日韓サッカーワールドカップなどでもアクリル素材の国旗が採用され続けました。
■化学繊維の歴史
化学繊維の歴史
1951年 ナイロン繊維を東レが生産開始
1958年 アクリル繊維を日本エクスラン工業が生産開始
1958年 ポリエステル繊維を帝人と東レが生産開始
1964年 後発ポリエステル繊維メーカー生産開始
1964年東京オリンピックで使われる国旗に採用されたアクリル繊維は出来立てほやほやの新商品だったようです。
■2020東京オリンピックで採用された国旗はポリエステル
残念ながらコロナの影響で2020東京オリンピック(2021年に延期)は無観客で開催されました。使用された国旗はアクリル素材は採用されませんでした。「軽量で微風でも風になびく素材」という指定項目がありました。結果的にはポリエステル(テトロン)トロピカル生地が採用されました。TOSPAが日本国旗、世界の国旗に採用している素材と同じです。
競技会場は50数か所、参加207カ国。各会場ごとに会場掲揚、メダル表彰、開会式、閉会式、選手村などで使用される国旗は約10000枚だったそうです。無観客の会場のポールに掲揚されたのはポリエステル(テトロン)素材の国旗でした。テレビで観戦したほとんどの人は関心はないでしょうが、旗屋としてはアクリル素材からポリエステル素材への移行した画期的で歴史的な出来事でした。
■綿素材の国旗のお話
TOSPAでは1937年の創業以来80年近く綿100%の国旗を生産しています。過去には風によくなびく綿バンティング、織り込んだ糸が細い高級感のある綿ブロード(ブラウスやワイシャツなどに使われる生地)、平織りのスタンダードな天竺木綿など各種ラインアップしていました。現在は平織りのスタンダードな天竺木綿の日本国旗のみ生産しています。外国旗は綿素材での生産は中止しております。外国旗はすべてポリエステルトロピカル(2020東京五輪採用生地)に移行しています。